
◆こういう光景は全国どこにでも見られる。採石工場の廃墟である。
◆県道を走っていると飛騨と美濃の境の山の中腹に、この廃墟はある。私はこの工場の全盛期から知っている。山道を行き交うダンプカーの音、ガッガーガッガーと岩を砕く音が、麓の村に鳴り響いた。そこを通過するたびに私たちは眉をひそめたものだ。
◆高速道路の建設、埋め立て工事、新幹線の敷設、ビル建設、当時はどれだけ砂利を生成しても需要に追いつかなかったという。この採石工場の後ろの山も、その土や岩が全国の建設事業の礎になったと思いたい。
◆やがて、工場の騒音は鳴りをひそめた。いま、夏草のなかに辛うじて往時の威容を誇っているようだ。まさに、芭蕉の《夏草や 強者どもの 夢のあと》だ。
◆不謹慎かもしれないが、この光景、なんか‘朽廃美’といったような妙な美しさを感じる。
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